2021/4/4
4月に入り、視界の中に色が増えてきた。
木々の枝先には淡い緑。
菜の花のイエロー。
チューリップの赤。
枯れたモノクロームの景色から一変、日差しの強さだけでなく、鮮やかさも目に見えて増してきている。
自宅が水田に近いこともあり、最近は夜になるとカエルの声が賑やかになってきているし、ウグイスの声も良く聞こえるようになった。
電線には燕もとまっている。
もうすっかり春である。
今日は正午を境に風が強くなり、淡いブルーの空を少しずつ雲が多いはじめ、日の光を残したままぱらぱらと雨が降り出した。
嵐と呼ぶには優しい、春の天気の移ろい。
変化の合間、ほんのすこしの間しか見ることができない現象に立ち会えると、何だか得した気分になる。
雨が降ると、黒く塗れた枝と若い芽の緑のコントラストが美しい。
どこからともなく風に舞ってきた桜の花弁が車や建物に張り付くのも、風情があって良い。
ただ、落ちた花弁はやがてくすんで、驚くほど汚くなるのは毎年のこと。
雪が解けて泥に混じるのと同じであるが、何事も、きれいなばかりではいられないという事実に、平家物語の冒頭の“諸行無常”、“盛者必衰”という言葉を思い出してしまう。
ところで、1日の見たもの、感じたものを、こうして言葉に起こしてみると、実にいろいろな発見があることに気が付く。
朝から晩まで、すべてを文字にすれば原稿用紙で数十ページはくだらないボリュームになるだろう。
そんなふうにきちんと日々を感じているだろうか、と自問する。
感覚を開いて初めて世界は鮮やかさを取り戻すのだ。
わたしに限らず、目まぐるしく変化する現代、目の前の課題への対処に精いっぱいで、認識が狭まってしまっている方も多いのではないだろうか。
時には、異邦人になったつもりで、当たり前のものにも心を開き、小さな発見を集めてみるのも悪くないかもしれない。
さて、制作はというと、相変わらずのペースである。
特別な進捗はないけれど、引き続き一歩一歩。