『きざす庭にて』1期 残間奈津子展

アート探訪

2021/6/26


残間奈津子さんの今回の展覧会。
展示室に入ってまず印象的だったのは、非常にソリッドで鮮やかな主題の描写である。
全体に豊かなボケを活かした画作りをしているのだが、主題となるものが驚くほど鮮烈にフォーカスされている。
一方で、その主題の手前にはゴーストやハレーションのような不鮮明なモチーフが配されているものが多い。
2つの同じモチーフが重なっているものなどは、滲んだ像の向こうに唐突に鮮明な輪郭が浮かび上がり、焦点のコントラストが幾重にも重なるような効果を生んでいる。
それはあたかも多重露出、またはガラスに映り込んだ像越しに見た風景のようでもある。
そのボケは形態を光に置換し、画面全体に光の奔流で満たし、距離に応じた像の層を作り出し、作品の中の視界の深度をどこまでも深いものにしている。

会場風景

このボケ味を活かした表現について尋ねると、「ぼんやりとした性格なので」と語る残間さん。
しかし、わたしはむしろ被写体に対する彼女の非常に鋭い視線を感じた。
ドラマチックな光の選択、絞りの解放、モチーフの重なりなど、すべては一定以上のロジックなしには作り出せないものであるはずだからだ。
もちろん、それはほかの写真家、さらに言うならあらゆる創作や表現において、当然不可欠なものである。
いずれにしても、わたしには、彼女の主題の描写に「ぼんやり」ということばは不似合いに思われたのだ。

sun set

そんな彼女のまなざしは、決して特別ではない、手の届く範囲のものの飾らない美しさをそっとすくいとっているように感じる。
そうして掬い取られた小さな花々は、35mmの世界の中では幾重もの光に包まれて、まるで物語のような特別さをもたらしてくれる。

warm light

カメラは機械である。
作り出される画は、その機能に依存する。
それゆえ、レンズ越しでしか見ることができない画が、確かに存在する。
その事実を、改めて魅力的だと感じた。


きざす庭にて - In a garden with a sense of life –
第1期 残間 奈津子 展
2021年6月22日~7月1日
ギャラリー・サザ
(茨城県ひたちなか市共栄町8-18)
https://www.saza.co.jp/index.php

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